2009年4月4日土曜日

第五回質的研究集中ワークショップアンケート調査結果

 長崎大学で行われた第五回質的研究集中ワークショップ終了後、次のような内容の簡易アンケート(量的)が行われました。

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■ 質的研究集中ワークショップに関するアンケート1(量的)

 アンケートのお願い。4日間お疲れ様でした。今後よりよいワークショップを開催するための資料とさせていただきたいと思いますので、無記名のアンケートにご協力ください。

 今回のワークショップにつきまして、率直な実感として以下の各項目の当てはまるものを選択し、○で囲ってください。


(1)ワークショップ全体の満足度
 [5とても満足・4まあまあ満足・3ふつう・2やや不満・1とても不満]

(2)ワークショップ全体の楽しさ
 [5とても楽しかった・4まあまあ愉しかった・3ふつう・2あまり愉しくなかった・1まったく愉しくなかった]

(3)質的研究のリサーチクエスチョンの立て方からデータ収集、分析、理論構築、発表までの概要を体験的に理解できた。
 [5よく理解できた・4まあまあ理解できた・3ふつう・2あまり理解できなかった・1まったく理解できなかった] 


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【結果】

31名の回答を得られ(回収率94%)、結果は次のようになりました。

(1)WS全体の満足度 5[とても満足]=21人、4[まあまあ満足]=10人

(2)WS全体の楽しさ 5[とても楽しかった]=28人、4[まあまあ楽しかった]=3人

(3)リサーチクエスチョンの立て方からデータ収集、分析、理論構築、発表までの概要を体験的に理解できた
 5[よく理解できた]=9名、4[まあまあ理解できた]=19名、3[ふつう]=2名、2[あまり理解できなかった]=1名

 なお、(3)については次のような補足的がありました。
「このベーシック編を用いて、一つ自分で研究をまとめたいと思います。そうすると「良く理解出来た」レベルになるとおもいます。」
「質的研究の初心者としてはとにかく手法を一通り体験できたというレベルなので、これから少しずつ理解を深めたい。」



 またそれぞれの平均値は以下のようになりました(小数点第二位四捨五入)。

(1)WS全体の満足度 4.7

(2)WS全体の楽しさ 4.9

(3)リサーチクエスチョンの立て方からデータ収集、分析、理論構築、発表までの概要を体験的に理解できた 4.2




アンケートにご協力いただきありがとうございました。

第五回質的研究集中ワークショップ受講者の感想

 第五回ワークショップの受講生の皆様のアンケート(質的)に書いていただいた感想を掲載いたします。 アンケートのご協力いただいた皆様,誠にありがとうございました。


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 ワークショップに参加した目的が質的経験を一通り経験することだったので、それを4日間で体験学習できたことについて大変満足しています。事前の案内を読んだ時、「熟読すること」という言葉に多少のプレッシャーを感じましたが、テキスト自体がわかりやすかったので、当日のワークショップが始まった時は、内容に入りやすかったと思います。それに、西條先生がスラスラと何の滞りもなく説明をしてしまったとしたら、私も参加者として「ちゃんとやらなければ・・・」と非常にかしこまってしまったと思いますが、考えながら話されていたり、時々間があったりしたことで、じわじわとワークショップに馴染めていけたような気がします。変な言い方ですみません。

 最も印象に残ったことは、「楽しいからこそ続けられる」「楽しくなければ続けられない」ということです。これは自分たちが関心のあるテーマを研究したことが大きかったと思います。全体を振り返った時、なぜ2班はいつも笑いながら4日間を過ごせたのかを考えて、このRQだから楽しくできたのだと気づきました。同時に、自分の中で「研究を楽しむ」なんて考えたことがなかったのではないか。研究は「やらなければならないこと」のように思い込んでいたのではないかとハッとさせられたのです。

 これと大きく関連するのが共同で研究することが楽しいということでした。私の中で共同研究と言えば、対等な関係で行うものではなく、上下関係の中で行うものだというイメージが強かったので、「楽しいもの」というよりも「業績は作れるけれど気疲れするもの」だというのがありました。けれども、今回のグループワークでは、先生が毎日強調されていた「ワークショップの原則」が生かされて、各自の持ち味が生かせたのではないかと自負しています。その結果、皆が「楽しい、楽しい」と言いながら過ごせたのだと思います。

 また、当初は異分野の人とは方法論では共通しても同じ関心で研究することはできないと思っていましたが、このワークショップが終わった今ではむしろ逆の考えを持っています。特に私にとっては、看護の分野でも教育であり実践の場である現場を抱えていることと研究を両立することの困難さという日本語教育分野とも共通する問題を見つけることができたのが大きな発見でした。「今度一緒に研究をしましょう!」と早速この縁を生かして次に繋げていく気運に満ちています。

職位(身分)[ 准教授 ]・関心専門領域[ 日本語教育学 ]


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①全体の印象や雰囲気

 非常に学びやすい環境だったと思います。長崎の開催とあって、グループのほとんどの方が顔見知りで、うまくとけ込めるか心配でしたが作業を進めていくうちに問題なくなりました。グループメンバーの方が、いろいろとお気遣いくださったのだと思います。本当に最後の打ち上げまで楽しかったです。自分にとって大切な「学習コミュニティ」を持つことが出来ました。

②ワークショップの形式や内容
 基本編としては、十分理解しやすかったと思います。進め方も実践的でよかったです。

 ただ、認識論や理論的前提の部分は質的研究において非常に重要な部分でしょうから、いろんなディスカッションがあったりした方がよいのでしょうが、分析してまとめの作業もあることから考えると、時間が長いと思いました(3日目の午前中など)。先生のご指定いただいた本の内容は基本的に理解しておくことが前提でしたので、例えば、「理論とは」などのようなやりとりは無くても良かったのではないかと感じました。

 インタビューガイドについての全体でのディスカッションは、半構成インタビューにおけるインタビューの項目の設定等についても議論できて良かったです。

 日程的に苦しいと思うのですが、概念化、コアカテゴリーの設定等で先生を交えたディスカッションがもう少しあっても良かったかなと思いました。客観性を問うわけではありませんが、自分の解釈をより適切にすすめるためにも。ただ、限られた時間で西條先生は非常に熱心に見てくださっていたので、その部分で不満があるわけではありません。

③グループワーク、参加者

 グループは看護の方が多く、私も看護系の人間なのでグループワークも進めやすかったです。他のグループは、いろんな分野の方もいらっしゃったようでそれはそれで面白いと思いました。私の修論は、状況論的アプローチを用いた新人看護師の研究だったので、心理学系の参加者の方と議論したり、協働したりすることも個人的には興味を感じます。

 今回のワークショップは非常に和んだ雰囲気でしたし、その点を西條先生もご配慮くださっていたので良かったです。

④講師の教え方、また特に印象深いこと,特に学べてよかったこと、ワークショップの感想

 どんな質問にも真摯に向き合って、自分の解釈をきちんと述べてくださる西條先生のご姿勢に感銘いたしました。研究者としても非常に見習わなければならないと感じました。質的研究に関して、今まで考えていたこと、過去に指導教官から教えていただいたことが、西條先生の本でより解りやすく説明してありましたが、今回のワークショップでご質問させていただくことで自分の中で理解し直すことが出来ました。非常によい学びになりました。

 最後の打ち上げも楽しく、西條先生の方からいろいろと話しかけてくださって非常にうれしかったです。本当にありがとうございました。

職位(身分)[大学講師]・関心専門領域[看護学・看護教育学]


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○全体の雰囲気は、非常に自由で隔たりの無い、楽しい雰囲気でした。はじめのオリエンテーションで、ワークショップをすすめる注意点として、雰囲気に触れていた事も影響しているのでしょう。特に、研究者ではない私など現場の人間が、このワークショップに参加してついていけるか、理解できるかと不安でしたが、そのような壁を作るものはなく、のびのびと発言できました。

○ワークショップの形式は、事前にベーシック編を読んで参加したので、おおよその形式は理解でき、それと大きく違わなかったので、スムーズに参加できたと思います。

○参加者も、大学の先生が多かったと思いますが、分野が分かれており、看護系だけでなかったことが、グループワークのディスカッションを深めることに繋がったと思います。グループ分けも特に意識してはいなかったと担当の方から伺いましたが、どの班を見ても、大学の偏り、専門分野の偏りがないバランスのよいグループになっていたと思います。

○講師の教え方:一見講義なれしていないかのような、一つ一つ確認して話す、すすめるという点が、逆に、聞く側の集中力を高めたように思います。ワークショップに通いなれた人は、講師の流暢な自信たっぷりの話し方をイメージすると思うのですが、先生の話し方、すすめ方は、自信が無いわけでもなく、自信が鼻につくということでもない(失礼な表現でした・・・)、真摯に質的研究について語っていただけたことが、講義やワークへの関心を更に高めたように思います。

○特に印象深いこと・学べてよかったこと
 まだ、理解できたとはとても思っていませんが、ワークショップの中で出た質問「構造構成主義は、何故、『主義』というのか?」「メタ理論とはなにか」「自分達が使う『理論』と、先生が説明する質的研究の中での『概念=理論=テクスト』とは、どう違うのか」といった内容と先生の回答は、やり取り自体も印象深かったですが、内容も本質的なことについて説明をしてもらう結果になり、とてもよかったと思います。

 本を読んで参加し、先生の講義を聞いていると「わかったような気持ち」にはなるのですが、その「わかったような」は、「構造構成主義のバックグラウンドの広さ・深さ」であり、簡単に批判できないという畏敬の念のようなものです。わかっていない事をわからないという率直さとそれを理解できる形にしようとする先生の説明のいずれも、学ぶ人間にとって大切な事だと感じました。しかし、今回のような質問には、あらかじめ準備しておいても良いのではないかとも思いました。構造構成主義の中で使われるコアな言葉や概念については、他の本の中に簡潔に触れられていたりしていますので、それから抜き出して、ワークの初めに触れていただくと良いのかもしれません。(実際は触れていたようにおもいますが・・・)

 ワークショップを通じて、RQの立て方が大変重要であると思いますが、最も難しいのもRQでした。「こだわらないこと」と「なんども考えること」のバランスが難しく、グループで一つのRCを作るまでには、それぞれの考えを出し合い、議論しぶつかって、壊して、そこから共通項を作る・・・と思うと、こだわりも必要・・・でも適当にこだわらないで進むことも必要・・・。こだわらないで進むことと「妥協」はどう違うのだろう・・・等、まだすっきりとはしていません。モデルの形が最終的に一部変更になったことについて、議論が十分でなかったために、それでよいと納得も出来ず、またどこが違うとも主張できずという感じで、もっともっと自分達で意見を言い合うべきだったと思います。

 それでも、RQからモデルが出来てくるとそれは部分的にではあっても普遍性を含んでおり、「そうそう、そういうことよ」といえるモデルが出来る。すると、ある人たちにはそれを使って役立ちそうな説明が可能になる面白さ。RQの元に出てきた現象の解釈の面白さと解釈の怖さのようなものを感じ、「志」の大事さを噛み締めました。

 全体を通していとことで言うと、「楽しかった」です。

職位(身分)[看護師長・医療安全管理部副部長]・関心専門領域[心理、精神、コンフリクト・マネジメント、医療安全管理]


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 修士課程の2年間でやってきたことを4日間で行ったので、濃厚で、充実しすぎて、頭も朦朧としていたので、ついこの間のことなのによく思い出せず、すみません。すごく楽しかったです。本を事前に読んでいたのもよかったんだなと思いました。参加者同士にあまり上下関係がなく水平関係で意見交換出来たのでよかったです。それとグループ全員医療従事者でしたが、関心専門領域も職種も年齢も微妙に違うグループだったので、普段接点があまりない方たちと意見交換できたのがよかったです。

 先生がおっしゃるように3日目が朦朧として地獄のようでしたが、最初からお膳立てしてもらって、困らないようにしてもらうより、苦労するほうが、達成感もありました。

 そして先生のポイントをついたアドバイスでわかったような気になりました。微妙なさじ加減がよかったです。今は登山(実際やったことありませんが)をした後のようで、充実感と疲労感で朦朧としています。なので、今すぐワークショップ続編の企画があるよ、どうする?といわれたとしたら、躊躇しそうです。ですがしばらくしたらまた気持ちが蘇りますので、ぜひ続編をよろしくお願いします。遠いと思いますが、また長崎に来て欲しいです。色々とありがとうございました。

職位(身分)[専任教員]・関心専門領域[助産学]


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全体の印象や雰囲気
質的研究を学びたいという意欲に燃えた人々の集まりで、熱気が伝わってきました。

ワークショップの形式や内容
4日間という2週間にわたる短期集中型ワークショップはウイークデイに休みをとれない私にとってはとても有難かったです。
内容も、事前に指示を頂き学習できていたこともあり、理解しやすかったです。

グループワーク、参加者
グループメンバーの年齢が若く、活発な意見の交流があり、年配者の私は大変興味深く、楽しく勉強できました。

特に印象深いこと,特に学べてよかったこと
「質的研究では仮説をつくらない」ことに悶々と悩んでいたので、今回の先生の「ある程度の仮説(見通し、ビジョン、仮想)は必要である。しかし固執しないこと。」という発言で勇気付けられました。それと「少数事例で了解を得るためには包括的に示すことが大切」ということも合点がいき、私にとっては大きな学びでした。

職位(身分)[ 教授 ]・関心専門領域[ 助産学  ]


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・各グループに男性が入っていたことの成果は大きかったと思います。職種も性別も違う個がディスカッションを通じてぶつかり合うことで、普段「だよね~」と言葉を省略してもわかりあえる環境にいることから飛び出すことができ、物事を考えるときの言葉の重要性と異文化コミュニケーションの必要性を再確認しました。答えを出すことよりもディスカッションの過程を大切にしながらグループで作業に取り組めたと感じています。

・毎回、最初にワークショップのルールを確認していただいたのでよかった。やはり地方での開催、さらには限られた領域が世話人となった場合、同じ職種や職場からの参加が多くなってしまうことは否めないので職位間の無言の圧力というものは仕方がないと思いますが、あえて言語化して確認していただくことでお互いに気をつけることができたと思います。

・作業の合間に、参加者からの質問に答え構造構成主義の考え方にも触れていただいたのでよかったと思います。たしかに先生の本に書いてあることではあるのですが、実際の作業と照らし合わせながら西條先生の生の語りで、本をさらに噛み砕いた表現で説明していただけたのでワークショップ終了後に再度本を読んだときに、「ああ、こういうことだったのか」と少しだけ理解が深まりました。翌日にいただいた質問をまとめた資料も参考になりました。

・事前に西條先生の本を読んではいたのですが、わかったつもりだった自分に気がついて、ワークショップ終了後、再度先生の本や池田先生の本を読んでいます。このワークショップで終るのではなく、これをひとつのきっかけとして継続して学習していきたいと思います。

職位(身分)[大学教員]・関心専門領域[ 看護、福祉、教育  ]


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 研修を受けようと考える方が集まっていたので、積極的な雰囲気があり刺激になりました。他職種の集まりも視野が広がりよかったと思います。

  ワークショップの形式や内容について・・・
  7人のグループワークは、多いように感じましたが、実際作業をしていくと妥当な人数だと思いました。教授もいらっしゃいましたが、自らリーダーを買ってでていただき、研修生の一人として接していただけました。

 はじめの講義は、質的研究を勉強するにあたり役立つものでした。いくつかの本を読んだ知識が整理されたと思います。しかし、SCQRM・構造構成主義は、講義の中では理解しにくかったです。後日参加者からの質問が展開される中で、私の本での理解が間違いではなかったということがわかり、理解できました。

職位(身分)[ 看護大学 助手 ]・関心専門領域[クリティカル領域 ]


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 テキストを読んできていることが前提で進めていくスタイルが、私にはとても合っているようです。のんびりした雰囲気でスタートして、限られた時間内に何とか形にしなければ!という緊張感と最後に得られる達成感は、とても心地よいものでした。

 これまで私は1名のデータを分析することに違和感を持っていました。そして私が発表するとき、対象者が少ない場合は対象者の背景をある程度公表することで、「限定された対象であることは分かってるの!」という言い訳をしてきたように感じました。分析のプロセスも一般化されたような、形式に沿った記載しかしていませんでした。また、聞き手が参考になるかどうかの判断をつけられるような情報を提供していたかというと、発表することに精一杯でとても不親切な内容だったと思います。

 私がなぜ1名のインタビューデータの分析に違和感を持っていたかと考えると、発表形式によるものもあると思いますが、「対象者の語りデータ」→「このように分析した」という流れを集めた発表が多くて、全体の構造が見えなかったからではないかと。ある方の経験として「それは大変な思いをしましたね」という気持ちでは聞けても、研究者に対しては「なるほど」と思えなかったのです。今回、ワークショップで2名のデータを分析から発表まで経験し、私たちの分析に参加者がきちんと反応してくれたこと(私たちが「おもしろい」と思っていたことに笑いの反応があったことが一番!)、悩みつつもグループで納得いく構造が作り上げられたことで、1名のデータでもこの方法だったら納得いく説明ができるかもしれないと思えました。

職位(身分)[大学教員(助教)]・関心専門領域[小児看護・障害児]


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■全体の印象や雰囲気
 やるべき課題がたくさんあったわりには、全体的にゆったりした雰囲気で活動が進行したと思います。そのため、最初から特に緊張することなく、リラックスして活動に参加することができました。

■ワークショップの形式や内容
・形式
 グループワークを中心に活動が進み、時々先生の講義(&質疑応答)が入るという形式だったかと思います。新たな作業を行う前に、講義で必ず「その作業をどのようにするのか」だけではなく、「なぜその作業をするのか」に関しても説明があったため、納得して作業に臨むことができました。

・内容
 ワークショップを通して、次のような質的研究の一連の流れを体験することができました。
①RQを立てる。②インタビュー項目を決める。③インタビューを行う。④インタビューを文字化する。⑤インタビューデータから概念を導き出す。⑥分析ワークシートを使って概念を精緻化する。⑦概念間の関係を図示し、構造を可視化する。⑧考察を考える。⑨発表する。
 また、一連の流れを体験することで、「RQとは何か」「理論・モデル・仮説とは何か」「カテゴリー、概念、バリエーションとは何か」「考察とは何か」というようなことがわかったような気になりました(実際に分析をし始めるとまたわからなくなるかもしれませんが 笑)。

■グループワーク
 一連の作業をグループで協働的に行ったことが非常に有益だったと思います。データから理論が浮かび上がってきたというよりも、グループメンバー間のやり取りの中から理論が浮かび上がってきたというのが私の実感です。(半分冗談、半分本気です。)

■参加者
 参加者の方々には、皆実践から発した自分の問題意識を記述するための適切な方法を会得したいという切実な参加動機があったように思います。たとえ関心領域は異なっていても、参加者が皆切実な参加動機を持っていたことが、ワークショップの場に適度な緊張感を生んでいたと思います。

■講師の教え方
 講義では、西條先生があらかじめ決まっていることを話しているのではなく、その場の状況に応じて考えながらお話されている様子が見て取れました。そのような話し方に、今この場にいる人たちと今この場でしかを生成できない何かを生成しようとする西條先生の姿勢が表われていたと思います。

 また、グループワーク中のコメントも非常に的確でした。講師にコメントをもらうことにより、それほど停滞することなく、作業を進めることができました。

■特に印象深いこと
 最も印象深かったことは、看護師の方々とたくさんお話しする機会を持てたことです。私は今回のワークショップにおいて、多くの看護師の方が非常に内省的な語り方をされることに感銘を受けました。(ワークショップの本筋ではないことで申し訳ありません。)

■特に学べてよかったこと
 上述したように、質的研究の一連の流れをグループメンバーとの協働作業を通して、体験的に学べたことが一番の収穫です。また、単に方法だけではなく、方法の背景にある原理的な考え方や、人間が現象を理解する際の癖などに関しても学べたことで、今後質的研究を実際に行う上での指針が得られたように思います。


職位(身分)[大学教員]・関心専門領域[日本語教育]


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 全体的に学ぼうとする姿勢で全員が臨んでおり,世話係の長崎大学の方々も様々な点で配慮してくださっていたので,非常に参加しやすかったように思います.グループは7名はちょっと多いかなと思ったのですが,全員が意見交換したり自然に役割が分担されたりと,スムーズなグループワークとなりました.また,全体で5グループだったので,西條先生が回って指導してくださるのもちょうど良い具合だったように思います.そして,先生は必ずメンバーの意見を聞いてくださってから指導してくださいましたし,愚直な質問にも丁寧に答えてくださいましたし,開かれた態度で質問もしやすかったですよ.全体でも,良い質問をしてくださる参加者が多く,見過ごしていたことなど確認できました.

 特に学べたことは,モデル図への飛躍の仕方です.一人で研究をすすめることが多く,どうしても自分の癖(パターン)であったり,なかなか動的な図にならないなど限界を感じていたものが,先生の最初のヒントを基にメンバーの意見で動きのあるモデル図へと変化していく過程が体験できたことは,最大の学びとなりました.そして,「RQ→質問項目の立て方→モデル図をどうするか→考察」の一貫した流れが,科学的研究として再確認できたことも,学びです.

職位(身分)[ 大学講師 ]・関心専門領域[ 看護学 ]


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 ワークショップの形式内容等、よかったと思う。全体の雰囲気も良く、グループの仲間ともよくディスカッションできていた。

 先生の教え方については、初めは先生が何を言いたいのか、よくわからなかったところもあったが、日を追うごとに、自分たちも実際体験していく中で、先生の言われている内容が把握できたと思う。講義の最初に、「年配の先生は、年下の人に押し付けない」等々の約束事のようなことを言われてありましたが、あれはやはり効果的だったと思います。それがあるから、それぞれ、平等に役割分担ができたのではと思います 。今後ともぜひ続けてください。

職位(身分)[保育士 ]・関心専門領域[乳幼児期の発達心理 ]


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 今回長崎で開催された、WS。参加させて頂いて、本当に良かったと思っています。受講料を上回るくらい多くの収穫があったし、これからもその恵みを違った形で活かしていけるように感じています。

 様々な職位・専門分野の方々と一つのグループになったため、最初は少しの戸惑いがありましたが、一日が始まる時に先生がWSの原則を押さえてくださり、以降は垣根を取っ払って一つのチームにまとまっていきました。

 内容的には、構造構成主義の原理的考え方を日常的な例を使って分かりやすくご講義頂きました。しかし、ただのトップダウン方式の講義ではなくよりゼミに近い形で、その時その場で湧き上がる参加者の本質的疑問や迷いに呼応するかのように丁寧に講義は進みました。ここが、きっと内的視点を大切にする質的研究のWSならではの光景ではないかとも思いました。その質疑応答を先生が活字に起こしてくださったことも大変有難かったです。また、研究の過程で陥りやすいループから抜け出す方法や、概念化・カテゴライズのコツ、抽象度調整の見極め、などなど、実践に役立つヒントをたくさん頂きました。

 グループワークで最初は遅れをとってしまった班でしたが、共にRQを見つめるまでには、異分野の言語理解から始まり、認識論の違いを認め合うこと、といった工程が必要だったからではないかと思います。そのうち、「今のは、メタだったねぇ。。(自身の分野の認識論で物を言った時)」、「これって、超メタ?(分野を飛び越えてRQの前に並べた時)」などと皆で冗談を言い合いながら手探りでRQまで辿っていけました。同時に分野・個の違いを生かしながら、研究を進めることもできました。本当に個性豊かなメンバーが揃い、それぞれの研究を持って温泉合宿を夢見ています。今振り返ると構造構成主義を体感していた(している?)のかも知れないと思います。これは先生の戦略でしょうか?

 そのことを思うと、研究の上だけではなく、臨床上で異職種間のマネージメントを引き受けたり、異職種での協働したりすることの多い心理の仕事にとっても、とても有用な視点をご教示頂いたと思います。先生の言葉で特に印象に残っているものの一つに、「自分の能力を自分の中だけに閉じてしまうと、その能力はうまく活用されなくなる」があります。自分の能力の性質と限界を見極めながら、常に人と人の間で使って頂けるよう、日々、精進していきたいと思います。ありがとうございました。

職位(身分)[臨床心理士]・関心専門領域[ナラティヴセラピー・緩和ケア]


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 ワークショップ参加の初日は、「自分が(ワークショップに)ついていけるだろうか」と不安でした。けれども、先生の講義中の譬えが初心者の私にもとても理解しやすく、事前学習したSCQRMベーシック編で記載されていた内容を想起しながら学ぶことができました。
特に、ホワイトボードに図示しながら説明していただいた、量的研究の限界や、内的視点、GTAなどがイメージしやすく、理解を深められたと感じています。

 4日間で、RQを定め、インタビューの実施、理論の作成という、一連の研究プロセスを体験できたことにより、「自分は何を理解していて、どこが理解できていないのか」を明確にすることができたと思います。同じグループメンバーの方とのディスカッションが、思考を深めることにつながり、一人では絶対に不可能であろうと思われることも、ひとつの形にすることができたことは大きな喜びでした。これは「成功体験」となり、今後質的研究へ取り組もうとする動機づけになりました。

 質的研究については、全くの素人といってもいいぐらいの知識でしたが、4日間が終了する頃には、こんなRQはどうだろうか?などと考えている自分に驚いています。

 「何のために」を常に考えることの重要性について、研究のプロセスで繰り返し説明していただいたおかげで、4日目にはグループワークでの意見交換で「この現象を理解してもらうためにどう表現するかが大切なことなので・・・」と「何のために」に戻って思考している自分を発見できました。「学ぶ楽しさ」を久しぶりに実感することができ、充実した4日間でした。とはいえ、概念を洗練していく過程においては、難しさを実感しています。今後もサポートを頂ければと感じています。

職位(身分)[ 看護師長 ]・関心専門領域[ 看護管理 ]


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