2009年10月17日土曜日

第三回 アドバンス編 質的研究ワークショップ(in長崎) アンケート(質的)

職位(身分)[日本語教師]・関心専門領域[日本語教育]

【全体の印象や雰囲気】

今回のワークショップ全体に発表者の研究を理解し、よりよくしていこうとする雰囲気があったように思います。普段、日本語教育の学会や研究会で発表すると、自分の研究内容や意義が上手く伝わらないということがよくあります。しかし、今回は、参加者のみなさんのほとんどが日本語教育の関係者ではないにもかかわらず、研究の内容や意義がきちんと伝わったように感じました(もちろん、単なる気のせいかもしれませんが)。私がそのように感じた原因は、次の二点にまとめられるのではないかと思います。
①「建設的な聴き方」

参加者が、西條先生が発表前のレクチャーでおっしゃった留意点を守り、研究を理解し、よりよくしようという姿勢で私の発表を聴いてくれた。

②分野の異なり

多くの参加者の方にとって、私の発表内容は、自分の関心領域と直接関わりのない内容だった。それゆえ、過剰に批判的になることなく、発表を聞くことができた。
(私は、自分とは異なる教育観に立脚する日本語教育に関する発表を聴くと、つい発表内容そのものを批判したくなることがあります。その際、「発表者の研究をよりよくしよう」という意識は飛んでしまっています。今回の私の発表は、多くの参加者の方にとって、他分野の、自分の仕事とほとんど関わりのない内容であったと思います。それゆえ、価値観の対立が生まれにくく、参加者の方々が「発表者の研究をよりよく」することに集中して、発表を聴けたのではないかと思います。これはあくまで推測です。しかし、上述したような印象から、私は、参加者各自の研究をよりよくすることが目的であれば、様々な分野の人が集まり、お互いにコメントし合ったほうが、より建設的な集まりになるのではないかと思いました。もちろん、どんな会でも、全員が「発表者の研究をよりよくしよう」という意識をしっかり持って参加すれば、建設的な集まりになるとは思いますが。)

【ワークショップの形式や内容】

概ね、発表→講師からのコメント→参加者からのコメント→講師によるまとめという流れだったかと思います。ベーシック編で学んだことを具体的な研究に基づいて確認することができる形式と内容だったのではないかと思います。また、発表後のやり取りの時間が十分確保されていたため、自分の話したいことをまとめてから話すことができました。その結果、発表者の関心や現実的制約を勘案しながら、コメントすることができたように思います。

【グループワーク】

今回のアドバンス編では、ベーシック編に比べ、グループワークの比重が軽かった(というかほとんどなかった)ように思います。しかし、グループ形式で座っていたことにより、(特に看護関係の)わからないことばや研究の背景となっている事情等を、同じグループの方に気軽に質問することができました。気軽に質問できたことにより、比較的容易に発表内容を理解することができました。

【参加者】

【全体の印象や雰囲気】でも記述したように、研究をよりよくすることが目的の集まりであれば、多様な分野からの参加者がいたほうが、より建設的な集まりになるのではないかと思いました。(私は、今回発表して、日本語教育の関係者の前で発表したとき以上に、自分の研究の内容や意義が伝わったような手ごたえを感じました。このことは、うれしかった反面、「自分のこれまでの発表はなんだったんだ」と若干切なくなりました。)

【講師の教え方】

各発表に対する講師のコメント内容、および、講師のコメントの観点を参考にしながら、コメントすることを心がけました。常に発表者の関心に基づいてコメントする講師の態度は、今後自分が研究活動を進めていく上で、常に心がけるべき態度であると思いました。

【特に印象深いこと】

繰り返しになりますが、次の二点が特に印象深かったです。

①参加者の方々に自分の研究の内容や意義がきちんと伝わったような気がしたこと。

②「建設的な聴き方」や「建設的なやり取りにすること」を心がけて聴けば、どのような発表を聴いても、(自分の思考訓練になるという意味で)有益であるという気づき。

【特に学べてよかったこと】

①他者の発表を聴く際の態度

私はこれまで他者の発表を聴くことにあまり積極的な意味を見出していませんでした。(発表内容にあまり関心がない場合はもちろんですが、関心のある発表内容であったとしても、発表を聴くより発表者が書いたものを読んだほうがはやいと思っていました。)しかし、今回のワークショップに参加し、どのような発表であれ、「発表者の関心に即して、よりよい研究にするにはどうすればいいか」を考えながら聴くという態度が重要であることがわかりました。なぜなら、そのような「建設的な聴き方」をすることにより、自分が研究を組み立てる際、何を重要視すべきなのかがわかるようになるからです。ワークショップ参加後は、「建設的な聴き方」を意識して他者の発表を聴くようにしています。その結果、他者の発表を聴くことに意味を見出せるようになりました。

②ベーシック編で学んだ内容の復習・確認

ベーシック編で学んだ内容を活用し、発表準備、および発表を行ったことにより、ベーシック編で学んだ内容をより自分のものにできたように思います。今後は、今回の発表を論文化したいと考えています。


職位(身分)[看護師長]・関心専門領域[看護管理・人材育成]

研究発表ではなく、聴講の立場でしたが、参加するからには何か質問することで、自分自身の学びを深めることを目標に参加しました。とはいえ、専門領域が全く違う研究に対して、発言できるか心配でもありました。イントロダクションの講義で、建設的な聴き方やアドバイスの仕方について確認できたことは、今回のワークショップに限らず、今後研究発表を聴く基本姿勢として持ち続けたいと感じました。

「アドバイス」することは難しそうに思えましたが、はじめは講師が質問するなど、会場からの意見が出やすいように配慮してくれていたように思えました。講師の質問をもとに考えているうちに、自分の思考の整理ができてきたように思えます。

発表者の方の専門領域や研究の進捗状況は様々でしたが、かえってそれが多くの視点に気づく機会となりました。特にRQの立て方については、(ベーシック編で学んだ)結果から見直してもよいことやその方法について、講師からのアドバイスを通して学ぶことができたと思います。

概念を導き出すことの難しさは再認識しましたが、研究発表している方々がどのように分析しているかを見ることで、自分にはない視点に気づくことができたと思います。モデルの生成については、講師がホワイトボードに記載してくださることで、思考の整理ができたと思いますが、同時に自分で生成することの困難さも再認識しました。

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職位(身分)[看護師長]・関心専門領域[看護・医療安全・人材育成]

全体の雰囲気

はじめに「原則と留意点」で建設的な場になるように、「原則平等」という事を説明されるので、色々な職種と職位の方がいらっしゃっても気にならない雰囲気が醸成されるのは、ベーシック編と同様でした。

GW

今回は発表を聞きながら、参加者それぞれが意見や質問を述べる事が多かったので、はじめの自己紹介以外グループで話し合うという活動はなかったように思います。この点が少しもったいなかったという気がします。

自分達の院内研修では「では、今の発表に対する意見を少しグループで話し合ってまとめてください。司会者と発表者を決めてね。」などと運用する事が多いのですが、そんな型にはまったやり方をする必要があるのかどうか・・・。自由に手上げし、意見を言うほうが、セミナーとしてはずっと生き生きしていると思います。ただ、グループで話し合いがなかったので、前回ベーシック編でお話した以外の方と話したりする機会が少なかったと感じましたが、それを上回る意見交換があり、特に気にならなかったです。

ワークショップ

質的研究の発表された方、それぞれの内容が大方完成された内容から、検討途中の内容まであり、研究のそれぞれの過程での疑問が出されたので、とても身近に感じました。「概念名・定義・バリエーションといった区別が発表内容を見ながら、議論の過程で少し自分の中に落ち込んでいったように思います。これは自分が行ってみないとわからないですが。発表や講師の意見、他の参加者の意見を聞きながら、やはり言葉の選択は重要だと思いました。よく検討された発表は聴いていて、論理的構成がよく理解でき、説得力があるということも実感しました。

参加者

今回も感じましたが、このワークショップの参加者は自らの希望で参加している方々で、普段から交流がある方々の中に、今までまったく知らなかった人も加わっています。ワークショップの始めこそ初対面のギクシャクした感じはあるもののワークショップの過程ではそれが無くなって、自己開示しやすい雰囲気が形成されてきます。その雰囲気がベースになって、グループワークが白熱し、多くの学びが得られると思うのです。これは、講師、参加者双方によって創り出されるものなのでしょうか。

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職位(身分)[ 非常勤講師 ]・関心専門領域[ 日本語教育 ]

互いに異なる研究領域であるにも関わらず、よりよい研究にするにはどうしたらよいか、という観点から、非常に建設的で活発な意見交換ができる場が形成されていた。そのことが何よりも印象に残っている。

発表者の立場からも、非常に有意義なやり取りができたことにとても感謝している。これまで、同じ領域の人々が集まる場では、こちらが言いたいことをまっすぐ受け取ってもらえないことが多かった。恐らくそれぞれ信念を持って実践に取り組んでいるため、自分の信念と相容れない考え方には、何らかの抵抗を感じるからではないかと思う。そのため、議論したい部分が議論できないという結果に終わってしまっていた。

今回、あっけないほどすんなり言いたいことが伝わり、西條先生や、他の参加者の方々から的確なアドバイスをいただけて、本当にうれしかった。関心相関的に相手の意見を聞き、コメントすることの大切さを実感した。今後、学会や研究会などに参加して自分が発表を聞く際にも、お互いに得るものがあるようなやり取りをすることを意識していきたい。また、研究途上のものを出し合って、このような意見交換をする場を身近なところでつくっていけたらと思う。

 

研究領域はそれぞれ異なっていたが、いずれも人との関わりの中で、人が生きるある局面の現象を捉え、ぜひこれをなんとかしたい、可視化することで相手も自分もよりよく生きることに向かえたら、という思いでは共通していた。それは、質的研究が描き得る世界の共通性でもあると思う。そのことが、関心や共感をもって聞くことへとつながり、よりよい意見交換の場にすることへとつながっていったようにも思う。そういう意味で、質的研究は、異なる領域の研究者、あるいは、研究者のみならず、様々な人々との対話を可能にすると改めて気づいた。 

これまで、試行錯誤しながら質的研究に取り組んできたが、ワークショップに参加して、やってきたことが間違っていなかったと少し自信を持つことができた。今後、さらに質的研究について理解を深め、研究を進めていきたい。

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職位(身分)[学振特別研究員 ]・関心専門領域[ 地理学 ]

 M-GTAを実際に使ったことが無かったので、議論にどの程度ついていけるか心配な面もあったが、発表者が丁寧に報告準備をしており、受講生による議論や講師の先生による解説時間が十分に取られていたので、とても理解しやすかった。

 発表者の方は、それぞれ分野は異なるものの、自分の仕事の現場を研究対象としている人が多く、その点が印象に残っている。仕事とは直接関係のない対象を研究している私にとっては、外部からの調査者とは異なる立場がモデル構築に際してどう反映されるのか、非常に興味深く、とても新鮮に感じた。

 本は読んでいたもののベーシック編に参加していなかったため、最初は雰囲気をつかむまで少し時間がかかった。機会があればベーシック編にもぜひ参加したいと思う。

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職位(身分)[助教]・関心専門領域[小児看護]

アドバンスで一緒だった方が多かったので、同窓会的な雰囲気で楽しく過ごせました。

 RQに照らしてデータをみることとデータの内容からよりデータが活きる、まとめが役に立つ情報が得られるRQの立て方について考えながら参加することができました。

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職位(身分)[ 北九州市立大学国際教育交流センター講師 ]・関心専門領域[日本語教育・教師教育・教育心理学 ]

日ごろは看護や医療の分野の方とお話することはあまりありませんでしたので、今回のワークショップでは、分野は違えど、質的研究を志向する方とお話しできて大変興味深かったです。

日本語教育においては、まだまだ質的な研究は発展途上にありますので、こういった場で質的分析を前提とした議論が出来ること自体とても嬉しく思いました。

また、教室内の受容的且つ鋭い雰囲気がお互いを認め合いつつ研鑽を積もうという気持ちにさせられました。特に、私も分析ワークシートを作成する際に、概念名の付け方、ヴァリエーションの選び方など同じ悩みを持っていましたので、西條先生のアドバイスがリアルに感じられました。概念化とカテゴリー化とモデル作りにセンスが出るような気もしましたし、こればかりは言語化して構造化するのは簡単ではないなあと、改めて学びました。コツがつかめるようになりたいです。

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職位(身分)[準教授]・関心専門領域 [日本語教育学]

3月にベーシック編が行われたばかりであったことや、会場が同じであったことなどから、慣れるというよりも、懐かしささえ感じました。ベーシック編で同じ班だった方が二人参加されていたことや馴染みの顔が多かったので、雰囲気は良かったと思います。

 

研究発表の分野が自分の専門外であっても、同席の人に聞くことができたので、むしろ様々な角度から質的研究を見ることができたのではないかと思います。また、ほぼ完成している発表から分析の途中段階のものまであったことで、かえって研究のプロセスを再確認することができたので、非常に勉強になりました。

 

一番印象に残ったのは、西條先生を中心に皆で発表者に対して建設的な意見を言おうとしていたことです。私にはゼミのような感じがしました。

 

ただ一つ残念なことと言えば、今回はグループワークがなかったことです。アドバンス編の内容を見れば、ないことはわかっていましたが・・・

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