2009年10月17日土曜日

第2回アドバンス編 質的研究ワークショップアンケート調査結果(質的)

関心専門領域[ 授業開発 ]

前回のベーシック編に参加できなかったので、知り合いの先生からご紹介いただきアドバンス編を聴講させていただけてよかったです。講師の西條先生をはじめ、関西大学院の院生の方が大変こまやかにお心づかいくださったおかげで、はじめてでもとても参加しやすかったです。メール連絡のこまやかさや時間厳守の文字などを見て、きびきびとした会だと予想していましたが、西條先生の雨の午前中にはちょうどのペースで始まったお話で緊張もほぐれました。

 

領域的にはあまり参考にはならなかったのですが、いろいろな研究分野の方がいろいろな研究や関心によって研究されていることは刺激になりましたし、アプローチの仕方は勉強になりました。特に学べてよかったのは、やはりRQの立て方でした。広がる関心からRQを絞り込むのは難しいこと、RQやゴールをタイトルに入れることも改めて思いいたりました。

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職位(身分)[看護師]・関心専門領域[医療安全]

西條先生の「ライブ講義 質的研究とは何か」を手にして、研究方法論というよりもむしろどういった教え方をされる先生なんだろう?という点に関心を持ちながらの参加でした。

今日は、RQの修正や資料の作り方、プレゼンまで幅広く学べました。研究方法をどう学び教えていくか?の説明のときに、これまでは『教えないが、盗み見る権利を与えた』・・・医療も高度になり分業が当たり前になっていますが、いまの時代にどういった学び、教え方が必要か?というようなことを問われたと思いました。『知の公共化・言語化』ということを話され、この時点で医療や看護の学会発表とは違った学びの空間を感じました。

西條先生とみなさんのやり取りからは、難しいことをわかりやすく他人に話すことの大切さを実感しました。

『管理職のメンタルヘルスの研究』では発表者と先生のやり取りを聞いて、女性医師の離職の問題が頭をよぎりました。医師は、管理職でない研修医のときからメンタルの問題を抱えます。管理職という職位より、働き方や裁量権、責任の重さが関係するとしたら。RQは?と、自分の関心に置き換えて考えていました。

こうした研究者の考え方や研究のプロセスを知ることによって、完成されたものだけを読むのとは違った学びができました。他分野の方とフラットな位置で集団として学ぶこと、看護の世界にも広がれば離職者が減るのかもしれません。現場で研究成果を活用する立場にある看護師としても有意義なWSでした。本当にありがとうございました。

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職位(身分)[ 講師   ]・関心専門領域[ 看護学 ]

発表者は皆さんそれぞれに,正直に内容を説明し討議して欲しい点を明確にされていたので,他領域ながらよくわかりました.また,参加者からの意見については,指摘のポイント(視点)と具体的アドバイスが,自分の思考にとって,質的研究という捉え方の上で非常に参考になりました.

時間的にはハードでしたが,意見交換しやすい雰囲気でしたし,人数的にも全員の顔が見えましたので,楽しい刺激がもらえました.また,抽象度が上がりすぎた概念やカテゴリーを作ってしまうなどは,私の課題でもあったので,他人事ではなく拝聴できました.

特に西條先生が,「ずっとモデル図を見ていると捨てられない.うまく表現できていないなら思い切って真っ白な紙に書こう」,「これまでの研究にない,あるいは質的研究ならではの面白い概念はあったか?」,「誰に役立つモデルなのか?」と言われたことは,分析に行き詰まっている私には特に重要ポイントでしたので,早速目にみえるところにRQと一緒に張り出しています.

ちょうど大雨で西日本では被害が出るような状況の中,良い学習の機会が得られたことを感謝していますし,関西大学の皆様にも大変お世話になりました.ありがとうございました.

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職位(身分)[医療機関勤務]・関心専門領域[高齢者福祉]

ベーシック編同様、多彩な分野の参加者で大いに刺激になりました。これは、西條先生のワークショップの特徴でしょうね。今回私は発表させて頂いたのですが、とても活発に皆さんからの意見を頂き、勉強になりました。また、発表が終わって席に戻った後にも、フロアの方から丁寧なご意見を頂く場面もあり、みなさんの熱意に感謝感激です。

今回は、概念名とモデル図の精緻化が目的だったのですが、自分の研究が客観的にどのように理解されるのかがわかっただけでも収穫でした。そして、モデル図の組み立ては自分一人のアイデアでは限界があるなあと、あらためて感じさせられました。道のりはまだ長いですが、何とか論文に仕上げたいと思います。

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職位(身分)[大学院研究生]・関心専門領域[社会心理学]

昨年ベーシック編に参加させていただき、とても貴重な時間を過ごすことができました。ただ参加しただけで放っておくと、学んだはずの多くのことが単なる知識で終わってしまう可能性もあるかと思い、今回は研究発表という形で参加させていただくことにしました。

 

聴講という形で他の人が行っている研究を垣間見させていただくことは、それはそれで大変有意義なことではありますが、やはり学んだことを自分自身の研究に生かしてみて、初めて「身につく」のではないかと思います。また、実際に発表をして第三者から意見をいただいて研究を洗練することは、より完成度の高い研究とするためには不可欠だと思います。今回の発表で、西條先生はじめ、さまざまな分野で活躍されてみえる方々が、私の発表に貴重なご意見をくださったことは、とても意味のある学びとなりました。

 

このWSは、発表希望者が多く、今回も発表者としての枠が埋まってしまったために聴講という立場をとられた方も少なくなかったと聞きます。その方たちにとって、私の拙い研究がどの程度役に立ったのかわかりませんし、かえってあのレベルの発表で申し訳なかった気もしていますが、今後機会があれば他の方の発表もぜひ聞かせていただきたいです。また、今回は発表終了後、何となく「ふぬけ」な状態で過ごしてしまったので、次回以降は積極的に質疑応答に参加し、聴講者としての役割も果たしたいと思っています。

 本当に充実した時間を過ごすことができ、感謝しています。ありがとうございました。

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職位(身分)[准教授]・関心専門領域[日本語学、人文社会系全般]

具体的な研究発表と質疑応答を実践するもので、 発表者にとっては自身の研究発表を実践することで有益な論の鍛練の場となり、聴講参加者にとっては建設的・生産的な質疑の経験の場となるものでした。「質的研究」に限らず広く研究発表や議論に携わる者にとって大変有益だと思います。
 

8名の方々の発表テーマは心理や医療、教育など、多岐にわたっていましたが、どの発表も研究者の具体的な実践(目の前の現象)に基づく問題意識が明確で面白かったです。 おそらく専門は最も遠いだろうなと思いつつ、専門を超えた生産的議論の場を楽しみました。

最近、個人的に関心を持っている、人間の成長(葛藤や困難をある意味乗り越える、メタ的な視点の獲得。これは研究の上での成長をもちろん含みます)の条件についてもいろいろ示唆を得ました。
 

関心相関的に設定されたリサーチクエスチョン(RQ、問題設定)の重要性、研究のフィールド、調査対象、データの扱い、分析方法、帰結からの予測の方向性も、すべてRQに照らして選択され整合性が吟味されることが繰り返し確認されました。質的研究に限らず、研究の論理的整合性や説得力を担保するために重要なポイントだなと改めて感じました。

 
 私の専門とする言語学の場合、研究対象は言語形式になるので、データ分析(定義、概念化)の具体的な手法は異なりますが、分析・一般化において、調査対象やフィールド(用例調査のテクスト)の選定の条件明示が必要であること、問題設定に照らして論が組み立てられ整合性が測られることは同様です。

そういう前提に立って「問題設定」について考えるとき、具体的実践に基づいて明確なRQを立てることができる、その側面を重視するアプローチであることは質的研究の大きな強みだなと感じました。翻って、言語学はもちろん多くの文系分野において、問題設定の明確化がもう一歩しにくい(甘い?)のではないか、とも、そのこと自体がメタな視点の獲得を遮り、適切な枠組みや理論の選定の機会を逸してしまう原因なのかもしれない、などとも思いました。

どの分野でも、多くの研究環境では、ある理論的枠組みが最善のものとして与えられ吟味選定の機会もないことすら珍しくないし、どれかに乗ってしまえばそれなりに格好がつきます。ある文脈では高評価を得さえします。ある範囲で用例をとってその範囲で記述的一般化することでも、意外と格好がついてしまいます。(記述はそれ自体現象をとらえる意味で当然重要ですがこれも本来問題設定あってのものです。)
 

文献や資料を前提とした文系の古典学的伝統を持つ分野では特に、問題設定を研究者自身が明確化しなくても成立してしまう側面があって、それが研究()自身の論の自立性や整合性をあげる営みの方向性を見えなくする(:先生や先輩だけ見える状況をつくる)原因なのかもしれません。
 

講師のお話しにもあった通り、研究は一人ではできないもので、当然、他の目での相対化や議論で洗練されるべきですが、議論の機会の生産性という意味でも、論自体の質の担保の基準となるべき問題設定の明確化、整合性のチェック(必要に応じて再構築)というプロセスは重要です。

WSでも「研究モチーフ」とRQの違いが取り上げられましたが、研究が停滞しているときというのは「モチーフ」くらいでとどまってしまっている、あるいは現象から離れて悪い意味で抽象化してしまっている場合なのかもしれません。いわゆる研究指導の際にも、タイトルなどを取り上げて(ケチをつけて)問題設定を確認したり明確化を促したりすることはあるのですが、まだまだ自覚的でなく先のばし傾向にあるかもしれない。もったいないことだなと感じました。
 

問題設定の明確化の重要性。当たり前といえば当たり前なのですが、改めて再確認した次第です。(WSのねらいそのものですね)
 

たくさんの生産的議論に対して自覚的な方とご縁を得る機会としてもたいへん有益でした。(名札制やお昼休みのグループ、懇親会のご配慮も幸いでした。)こういう日は疲れを感じません。(感じるのは翌日以降…)

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職位(身分)[学生]・関心専門領域[ 医療心理 ]

今回発表させていただいて,今まで自分が気にも留めていなかったことを指摘されたり、的確な改善案をいただいたり,大変有意義な時間を過ごさせていただきました。このような研究の場合,やはり終着点をどこにすべきなのかを自分で設定しなければいけないため,1人ではなかなか決断できないでいるところがあります。今回,少し背中を押していただき,とても感謝しております。また,参加者は,みなさんとてもいい方ばかりで,初対面の方がほとんどなのですが,またお会いしたいと思う方ばかりでした。このようなご縁をいただき本当にありがとうございました。

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職位(身分)[ 助教 ]・関心専門領域[心理学]

◎ 全体の印象や雰囲気

ベーシック編もしくはアドバンス編を受講してきた人がほとんど?で顔見知り同士もいたようであたたかい雰囲気だったと思う。かといって排他的でもなかった。コーディネートする先生の影響もあるように思った。

◎ワークショップの形式や内容

事前に形式や内容の説明を受けていたので特に何か思うことはなかった。私は今回ワークショップを受けずでの聴講で参加したが、受講された方の発表を聞けたことは今後の参考になった。

◎グループワーク

一緒にお弁当を食べたが、隣の人とお話できたのが楽しかった。

◎参加者

近くにいた人がお菓子をくれたり、親切にしてくれて嬉しかった。参加者の方の発表はバラエティに富んでいて面白かった。また、質的研究ということも関係しているのかもしれないが、研究と研究者が結ばれているという感じがして興味深かった。

研究は本当はどきどきわくわくするものでたまに苦しいときもあるけど楽しいものだということ、また、どんなにバラエティに富んでいても、もともとは同じところにあり路頭に迷ったときは立ち返りシンプルに捉えなおす、ということも思い出すことができた。

◎講師の教え方

発表が終わったあとも発表者とお話しをされたりして、その時その時で一人一人を大切にされる先生だと思った。先生のおっしゃることは共感できた。ごはんを食べてから?テンションがあがっていたのが印象的でした。

◎特に学べてよかったこと

発表者の方は、ワークショップで学んだことを自分の研究に照らして発表されていると思うので何も受講してなくても充分吸収できるものがあった。

先生のことばは、お聞きしていて心がざわざわするような、嫌な気持ちになることがなかったので安心できた。特に印象に残っているお話しはy=ax+bのお話や、強い立場の人が配慮すべきこと、あとは全く違う世界の人に聞いてみる、等だった。また、言語化できないこともある、というお話しも記憶に残っている。これについては先生が研究法について教えてくださった部分にも感じたことだが、暗黙知の部分があること、そしてそれを明らかにすることは実はすごく難しいのだがとてもわくわくするものであると思った。

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職位(身分)[准教授]・関心専門領域[看護学]

今回は様々な検討段階の発表を聞くことができ、応用編として実に得るものが多かった。特に、発表者のみなさんから「検討して欲しい点」を多々提示頂いたことで、実際的な議論ができ、誰もが突き当たる悩みを乗り越える道筋への示唆を頂く、素晴らしい機会になった。一つ一つの発表に西條先生が丁寧にコメントされるのも非常に勉強になったし、多彩な領域の方々のご意見も活発に出て、久しぶりに頭を本来の使い方に働かせることができて、楽しい一日でした。

格安の懇親会での交流も楽しく、普段アカデミックなこととはほど遠い運営に忙殺されている身に刺激をいただけたと思います。実は、インタビューは貯まっているんですが、テープ起こしが全然できておらず、焦っておりますので、この夏休みにどれかはこなして、次は発表ができるように・・と決意させて頂きました(いつまで続くか・・)

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職位(身分)[ NPOスタッフ ]・関心専門領域[ 教育 ]

「建設的なアドバイス」というグラウンドルールや、発表者からのリクエストにこたえていこうとする進め方によって、気持ちよく参加できたと思います。

モデル図を描くとき、どのような描き方があるか、どんな記号を使うとわかり易いかといったことの事例や、発表者のために質問するときの視点(=自分で自分の成果を見直すときの視点にもなる)がいくつか得られた点は、大きな収穫でした。ありがとうございました。

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